属人化したレビュー基準をAIチェックリストにする手順
参照したAIgram
目次
「その人にしか分からない基準」でチェックしていませんか
資料や書類のレビューは、多くの職場で「詳しい誰か」の頭の中にある基準で行われています。基準が言葉になっていないと、チェックする本人は困りませんが、見てもらう側は「どこを見られるのか」が事前に分かりません。
エクサウィザーズの経営会議レビューでも、以前はチェックが頭の中にある言語化されていない観点で行われていて、起案者にはどこを見られるかが事前には分からず、指摘を受けてから直す往復や心理的な負担があったといいます(AIフローデザイナーで経営会議レビューを起案者に開放)。同じことは資料以外でも起きます。チェーンストアの本部から店舗に出す業務指示は、内容の質の多くが個人のスキルに依存していて、作る人の得手不得手でニュアンスや齟齬が出やすい状況だったと報告されています(店番長AI指示アシスタントによる本部指示作成支援)。採用の場面でも、人が行う面接では評価のばらつきが以前から課題とされてきました(SHaiNで求人メディアのAI面接を24時間化)。
つまり「基準がその人の中にしかない」ことが、往復の手間やムラの元になっています。この記事では、その基準をAIに移してチェックリストのように使う手順を、事例に沿って順番に見ていきます。
手順1:頭の中の観点を言葉にしてAIに移す
最初の一歩は、これまで言葉になっていなかった観点をAIに渡せる形にすることです。
エクサウィザーズでは、AIの指摘がズレていると感じたときに「なぜ違うのか」を突き詰め、プロンプトを書き換えていきました。過去の経営会議の資料と照らし合わせながらこの調整を繰り返すことが、自分の観点をAIに実装する道だったと述べられています()。
具体的な整え方も参考になります。確認の順番を「市場の定義」から「競合との差別化」へと論理構造に沿って並べ直し、指摘の粒度をより具体的に落とし込むように整えたそうです。いきなり完璧な基準を書くのではなく、AIの出力を見て違和感のあるところを直していく、という進め方です。
手順2:観点を設定して自動で走らせる
観点が言葉になったら、それを毎回同じ手順で実行できるようにします。
- エクサウィザーズは社内ツールで、あらかじめ設定した「大植のレビュー観点」に沿って、資料を投入すると自動でチェックが実行される仕組みを構築しました(、
)。都度チャットで指示を出す手間を省き、決まったステップで処理を走らせる形です。
- 店番長のAI指示アシスタントは、本部担当者が入力した要点に、支援で培った知見と店番長アプリの設定情報をシステムプロンプトとして組み合わせ、GPT-4 Turboで業務指示案を生成します()。基準にあたる知識をあらかじめ仕込んでおくのがポイントです。
- 対話型AI面接サービスのSHaiNは、戦略採用メソッドをもとにAIが面接を実施することで、合否基準の統一と先入観のない選考を実現するとしています()。
- バクラクの仕訳では、過去の仕訳との一貫性を考慮してAIが最適な仕訳を推薦し、使うほど精度が進化する設計になっています(バクラクAIによる請求書処理工数90%削減)。過去のやり方そのものを基準として取り込む例です。
いずれも、その場の思いつきではなく、あらかじめ決めた観点や過去の実績に沿って処理を走らせている点が共通しています。
手順3:人が確認・判断する範囲を残す
自動化しても、最後に人が確認・判断する範囲を残しておくことが大切です。AIはチェックや下書きを引き受け、決めるのは人という分担です。
- バクラクでは、自動入力された仕訳を人が確認するだけで、会計ソフトや振込に対応したデータ形式で出力できます()。入力の手間はAIが減らし、確認は人が担います。
- マネーフォワードのAIエージェントは、規程・契約書・業務データをもとにリスクの兆候を検知し、人の確認や判断を前提にアラートや示唆を行う設計になっています(日程調整AIエージェントで会議調整を自動化)。
- SHaiNでは、求人企業が面接評価レポートを参考に採用可否を判断します()。AIは評価をまとめ、採否は企業が決めます。
もう一つ、何を入力してよいかという線引きも、人が判断しやすいように整えておくと運用が楽になります。コロプラは機密性のレベル分けを設計し、データの種類ごとにどのツールで扱えるかが社員にすぐ分かる状態を作ったことで、「これを入力していいんでしたっけ?」という問い合わせが減ったといいます(コロプラのChatGPT・Claude活用と効果把握)。
手順4:基準を組織へ開放して広げる
基準がAIに入ると、その人だけのものだったチェックを、まわりの人も使えるようになります。
エクサウィザーズは磨き上げたレビューAIを経営会議の起案者にも開放し、現場で自らAIと壁打ちして「想定される論点や課題」を解消しておく使い方を想定しています()。指摘を受けてから直すのではなく、出す前に自分で確認できるわけです。
店番長のAI指示アシスタントは、キーワードを入れるだけで大体同じような文章が生成され、属人的な差を埋めることが期待されています()。誰が作っても内容の質がそろいやすくなる、という広がり方です。
効果と、そこに置かれた期待
最後に、事例で報告されている効果と期待を確認しておきます。
もち吉では、AIが3〜4割のところまで推敲してくれるため、ゼロから考えるのに30分かかっていた指示作成が5分で済むようになったと報告されています()。時間そのものが目に見えて縮んだ例です。
エクサウィザーズは、属人的なチェック観点をAIに渡して再現性をつくることで、経営企画やCOO自身との修正の往復にかかる時間的コストの軽減を期待しています()。そして、このレビューAIは単なる個人の効率化ではなく、意思決定の質向上を含めた生産性向上を組織全体で享受するためのアプローチと位置づけられています。
頭の中にある基準を言葉にし、設定して自動で走らせ、人の確認を残しつつ、まわりに開放する。この順番でたどると、「その人にしか分からない」チェックが、みんなで使える再現性のある仕組みに変わっていきます。まずは自分がいつも見ている観点を一つ書き出すところから、始めてみてはいかがでしょうか。