生成AIで正確な出力を得るための入力条件の書き方
参照したAIgram
目次
AIの出力が外れるのは「能力不足」ではないという視点
生成AIを使っていて、思ったとおりの答えが返ってこないと、「このAIは賢くないのかもしれない」と感じてしまうことがあります。でも、その原因はAIの能力そのものではなく、こちら側の伝え方にあることが多いようです。
オートデスクがCAD向けのAIについて語った事例 Autodesk Assistantで2D図面から3Dモデル生成 では、AIの出力エラーの多くは「AIの能力不足ではなく、人間側がやりたいことを正しくAIに伝えられていないこと」が原因だと説明されています。だからこそ、対話を通じて的確な条件を与えることが大切だとされました。
あわせて語られているのが、AIは非常に便利だけれど「持っていないことはできない」という前提です。手元にない情報や、伝えていない条件から、正しい答えが出てくることはありません。つまり、良い出力を得るための出発点は、AIをどう賢くするかではなく、「何を入力として渡すか」を整えることにあります。
ここからは、実際の事例をもとに「入力にどんな条件を足すと出力が正確になるのか」を、いくつかの形に分けて見ていきます。
情報が不足した入力に条件を補足すると出力が正確になる
いちばん分かりやすいのが、足りない情報を補うという形です。
同じオートデスクの事例 では、情報が不足している2D図面をAIに渡したところ、最初は正確に出力できませんでした。ところが、たとえば「曲げ角度を90度に設定する」といったように、寸法や条件を補足していくと、正確な3Dモデルが生成されたと紹介されています。
元の図面が同じでも、条件を足すだけで結果が変わるという点が重要です。AIが読み取れなかったのは能力の問題ではなく、判断に必要な情報が入力に含まれていなかったからだ、と考えると腑に落ちます。
既存の設計書・資料を入力として構造ごと解釈させる
条件を一から書き起こすのではなく、すでにある資料をそのまま入力に使う、という形もあります。
三菱UFJ銀行の事例 MUFGのClaude Code AI駆動開発と行内展開 では、Excelの設計書に含まれるXMLや図までAIに解釈させて、プロダクションコードを生成しています。文章だけでなく、資料の中の構造や図もまとめて入力として渡している点が特徴です。そして、その出力は有識者が評価する運用になっています。
手元にある設計書や仕様書は、それ自体がAIへの入力条件のかたまりです。作り直さずにそのまま渡し、構造ごと読み取らせるというのも、一つの有効なやり方です。
チェックの観点・順番・粒度を明示して出力を整える
「何を、どの順番で、どのくらい細かく見てほしいか」を指定することでも、出力は整っていきます。
エクサウィザーズの事例 AIフローデザイナーで経営会議レビューを起案者に開放 では、あらかじめ設定したレビュー観点に沿って、経営会議の資料を自動でチェックするワークフローが作られました。
このAIを育てる過程がとても具体的です。AIの指摘がズレていると感じたときには「なぜ違うのか」を突き詰めてプロンプトを書き換え、確認の順番を「市場の定義」から「競合との差別化」へと論理構造に沿って整理させ、指摘の粒度をより具体的に落とし込むよう整えていきました。そして、過去の経営会議の資料と照らし合わせながらこの調整を反復することが、AIに自分の観点を実装する道だったとされています。
観点・順番・粒度は、どれも「入力条件」です。求める見方を言葉にして渡すほど、出力は自分の期待に近づいていきます。
入力する情報を整備し、構造化・箇条書きで渡す
同じエクサウィザーズの事例 からは、渡す情報そのものを整えることの大切さも読み取れます。
ここでは、データがしっかり入ることで説得力が増すとされ、いわゆる「コンテキストエンジニアリング」の手前にある情報整備の重要性が、実体験として掴まれたと語られています。そのうえで人間に求められるのは、要素を箇条書きでシンプルに書き出し、その関係性や因果関係を明確に構造化する力だとされています。
具体的な指示の例もあります。講演資料を作る際には、複数のソースを読み取らせて1枚のサマリーにまとめるよう、はっきりとした指示文(プロンプト)を与えて出力させました。何を読ませ、どんな形にまとめてほしいのかを、あいまいにせず言葉にしているわけです。
出力の形式を指定してドラフト化する
「どんな形で出してほしいか」をあらかじめ決めておくのも、有効な入力条件です。
FIXERの事例 FIXER、診察会話をAIで診療記録化する仕組みを開発・検証 では、テキスト化した診察会話をもとに、SOAP形式などの診療記録ドラフトを生成する仕組みが開発・検証されています。ばらばらの会話から、決められた形式のドラフトへと変換させているわけです。そして、そのドラフトは医師が確認・修正する運用が前提とされています。
出力形式を決めておくと、AIの答えが受け取りやすくなり、その後の確認や修正もしやすくなります。
過去データとの一貫性を入力条件として与える
過去の実績を判断のよりどころとして渡す、という形もあります。
バクラクAIの事例 バクラクAIによる請求書処理工数90%削減 では、過去の仕訳との一貫性を考慮して、最適な仕訳を推薦しています。
つまり、これまでどう処理してきたかという履歴が、そのまま入力条件として働いているわけです。
「これまでと同じ考え方でそろえてほしい」という一貫性は、言葉で細かく指示しにくいものですが、過去のデータを渡すことで伝えられます。
自分の案を入力し、対話で条件を足しながら深める
最初から完成した指示を書けなくても、自分の考えを入力にして、やり取りの中で条件を足していく形もあります。
中央中学校の社会科の授業の事例 中央中学校が生成AI対話で思考を深める社会科授業 では、生徒が事前に「自分なりの解決策」を考えたうえで、それを生成AIに投げかけ、対話を繰り返しながら答えを導き出しました。自分の案という入力があるからこそ、AIは違う角度や新しい気づきを返せます。
白紙からうまい指示を書こうとするより、まず自分の案を入力し、対話しながら条件を足していく。これも、正確な出力に近づくための現実的な進め方です。
出力を評価・修正できる前提で入力条件を磨く
ここまで見てきた入力条件の工夫は、どれも「出てきた答えを人が確かめられる」ことを前提にしています。
オートデスクの事例 では、AIが出力したデータの良しあしを評価できるのは、これまで培ってきた設計の経験があってこそだと述べられています。三菱UFJ銀行の事例 でも、AIの出力は有識者が評価し、その手順をガイドにまとめて行内研修や現場支援へ広げています。エクサウィザーズの事例 では、磨き上げたレビューAIを起案者にも開放し、現場で自らAIと壁打ちして、想定される論点や課題を事前に解消しておく使い方が想定されています。
入力条件を磨くことと、出力を評価・修正できることは、切り離せません。出てきた答えを見て「ここが足りない」「ここがズレている」と気づけるからこそ、次にどんな条件を足せばよいかが分かります。AIが外すのは能力の欠如ではなく、入力条件が足りていないから──事例はそろってそう示しています。まずは足りない情報を一つ補うところから、始めてみてください。